
出勤してるのに、呼ばれない。
フリーもない。
指名もない。
正直、暇な夜ってちょっと居心地が悪い。
スマホを見ていいのか、
待機で喋っていいのか、
なんとなく「時間だけ過ぎてる」感じがして落ち着かない。
新人キャバ嬢・のんは、そんな夜が少し苦手だった。
忙しくなってくると、空気が変わる
週末が近づくと、店の空気が変わる。
インカムが鳴りっぱなしで、
スタッフの声も早口になる。
うちの店の付け回しは、仕事ができる人だ。
判断も早いし、全体もちゃんと見えている。
でも、忙しくなりすぎると、
ちょっと荒っぽくなる時がある。
キャストを付けるのが遅れたり、
呼びたい席に間に合わなかったり。
のんはそれを、横で見ていた。
「大変そうだな」
「今、話しかけるのも違うよな」
そんなふうに思いながら、
待機席で静かに座っていた。
暇な夜ほど、みんなの“本音”が出る
不思議だけど、
忙しい夜より、暇な夜のほうが、
人の差がよく見える気がした。
・スマホを見続ける人
・不機嫌そうにため息をつく人
・なんとなく消えている人
その中で、
いつもと変わらない人もいる。
笑顔で挨拶して、
ヘルプに呼ばれたらすぐ立って、
戻ってきたら、何もなかった顔をして座る人。
のんは、正直こう思った。
「すごいな……」
暇な夜って、何も起きないわけじゃない
ある日、のんは気づいた。
暇な夜って、
売上もなくて、
イベントもなくて、
ドラマがない夜だと思っていた。
でも本当は、
「誰がどう過ごすか」
それだけが、静かに見られている夜なんだ。
誰も褒めないし、
誰も注意もしない。
でも、
ちゃんと見ている人は、見ている。
昔の自分なら、たぶん……
正直に言うと、
のんも前はスマホばっかり見ていた。
「今日はもう無理だな」って思って、
時間が過ぎるのを待つだけの夜もあった。
でも、
そういう夜が何回も続くと、
「何も起きない人」になっていく気がした。
暇な夜は、積み上げる夜かもしれない
別に、
気合を入れる必要はない。
無理に明るくする必要もない。
ただ、
・呼ばれたらすぐ動く
・挨拶を雑にしない
・空気を悪くしない
それだけでいい。
暇な夜って、
頑張る夜じゃなくて、
姿勢がそのまま出る夜なんだと思った。
のんは、そういう人になりたい
売れてないし、
指名もまだ少ない。
でも、
「何もない夜でも、ちゃんとしてる人」
のんは、
そういうキャバ嬢になりたいと思った。
まだ途中だけど、
今日はちょっとだけ、そう思えた夜だった。


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